和多田をたずねて唐津へ行って
本屋を探した
今年の秋も忙しかった。
ひと月あまり休みもないのはよいのだが、
上司からのダメージもあったりして、
(-.-;
状態であった。
温泉でゆっくりとも考えたが、温泉宿は何となく苦手な感じがし
て、

ビジネスホテルに泊まれる旅にした。

「綿田」の種も尽き、
「和多田」を訪ねることにした。

12/11(土)晴れ

10時前洗車と給油。

11時発。
玖珂SAでカツカレー。外のテーブルで食べる。タマネギの多い、甘めのカレー。懐かしい感じ。

福岡都市高速に入る。
「河内ベーカリー」のシナモントーストのような甘い匂いがする。
福岡前原道路では、牛の匂い。二丈町では海産物の匂いが微かにする。
初冬のいい天気の中、オープンでの走行は快適。

15時30分、唐津第一ホテル・リベールに着。飛び込みですぐ部屋が取れる。


4時前ホテルを出て、ホテル横の道を7・800メートル歩いてJR
筑肥線「和多田駅」へ。

日差しはぽかぽかとしているが、風は少し冷たい。
ぼんや〜りとベンチに座って高架のホームで列車を待つ。

16時12分発の西唐津行きに乗り唐津駅へ。


手持ちの本はすべて読んだので、本屋を探しがてら唐津市街をぶ
らぶらすることにする。

商店街は駅の北側にあった。アーケード造りの商店街。
唐津焼の店が何軒もある。学校帰りの高校生がいる。本屋はな
い。

商店街を抜けて突きあたりを地下道で渡る。ギターを持った男の
子が二人、地下道の曲がり角の向こうを気にしている。ギターをか
き鳴らして歌う声がする。

地下道の出口に、ストリートミュージシャンしている高校生がい
た。女の子がひとり一生懸命聞いている。



和多田駅は高架だが、周りはのどかな風景

地下道を出て、さらに北側へ向かうと唐津神社の向かいに「曳山
展示場」がある。


そういえば、「唐津くんち」が有名だ。

大人300円の入場券を自販機で買って、あまり期待せずに入る。

入って目を奪われた。

一閑張りで作られたという曳山が、現役のまま14台収納されて
いる。

一閑張り特有の漆の美しい艶のある巨大な曳山は、勇壮さを内
にかかえた優美さを感じさせ、しばし目を奪われる。


米屋町の「酒呑童子と源頼光の兜」。明治2年の作。これでも新しい方で、古いものでは文政2年のものもある。
武家屋敷があったという一角を通って唐津城へ行く。

海に突き出た山の上に天守のある平山城。ふもとの堀もそのまま
残されている。

その姿は優美である。

曳山といい、玄界灘に臨みながら唐津湾の穏やかさゆえだろう
か、たとえば松江に似た洗練を感じさせる。

海に突き出た岬に城があるのは萩城と同じだが、萩城が山のふ
もとであるのに対して、唐津城は山の上であるのは、関ヶ原の合
戦の結果であろう。

しかしながら唐津城を見て思うのは、こんなところに城(天守)を築
いて、戦略的にどういう意味があるのだろうか、ということ。敵に追
いつめられ、海にでも逃げ延びるつもりであろうか。

昨年萩城を訪れたとき驚いたのが、今はない天守が山よりはるか
に低いながら、指月山には物見が設けられ、戦闘的な作りであっ
たことである。

唐津城も同じような地形条件でありながら、そのあり方が大きく違
うことに、歴史を感じる。

唐津は、玄界灘に面した骨太さを底に隠した優美さのある街だ。
松浦川の河口が砂州によって直流を遮られ、その砂州が虹ノ松
原となり、光景は水都松江と同じように優しい。

唐津の大名として有名なのは水野忠邦。
彼は幕閣入りの野望を抱き減封を覚悟で浜松へ転封した。
唐津藩は長崎見廻役という重責を担っていながら、忠邦はこのの
どかな風光に飽き足らなかったのだろうか。

それもわかる気がする。
今も半分目覚めながら見る夢のような、柔らかな手触りのある町
である。

唐津城の天守から下りているうちに日がうっすらと暮れ始め、石段
に散り敷いた色あせたもみじ楓の落ち葉が、昔の夢を見ているよ
うであった。


旅の小動物シリーズ


今回は、ローライフレックス・ミニデジを持って行ったのだが、これが「スグレモノ」で、ズームもストロボもつかないどろではなく、タイムスタンプはつかない、上からのぞき込む式の0.9インチ液晶に、ハンドルを回さないとシャッターが切れないというギミックつき。しかも必ずシャッターが切れるとは限らない(これは初期不良か?)最初はおとなしく待ってくれていたこの猫も、しまいには呆れて去っていったときにようやくシャッターが下りた。
唐津の猫は毛並みの艶もよく、肉づきのよい猫ばかりだった。昨年の萩もだったが、城下町には猫が多いのか?

唐津城にいた白猫。しっぽの短い兄弟がいた。
城下の地下道を渡って道路を渡ると、男女の高校生が4人いた。
なんだか高校生が元気な街だ。


場内橋を渡り、ぐるっと回った形で再び商店街へ。
なぜか、商店街に本屋が見あたらない。

JR駅に戻り、薄暗くなった中を今度は南方面へ行く。
行けば行くほど寂しくなる。

途中小さなスーパーの店頭にいる店員に本屋を尋ねるが、遠いと
言う。JR駅にも駅前にも本屋はなかったし、唐津市民は本を読ま
ないのか?

JR駅に戻ろうとして見渡すと、遠くに「Bookoff」の看板が見える。
すっかり暮れた道を5・600メートル歩いて、行く。

3冊買って、JR駅に戻り、商店街周辺で居酒屋を探す。

駅のすぐ向かいの「山城屋」が古い寂れた民家で、店先にある冷
蔵ショーケースに地元のサイダーがあったりして気になったが、飲
む前にうどんというのもというのでもう少し歩く。せっかくなので魚
介系を。

焼鳥屋が目につく中、「居酒屋 大八車」へ。
地カキ酢、串カツ、骨センベイ、生ビール1杯、燗酒2合。
地カキは小指の先ほどの小さいもの。そのぶん味が濃いかなあと
思いながら食べたが、それほどでもない。

串カツは、豚肉が串に刺して揚げてある。付きもののネギとかタマ
ネギはなく、一枚肉が串に刺して揚げてある。それが二串。

骨センベイは、アジとキスと丸ごとが5匹分。これは美味しかっ
た。

もう少し食べたかったが、食指が動かず、唐津城に行くときに気に
なった「大連水餃子」へ行く。

途中唐津焼の店を冷やかす。
なかなかよい皿があったが、旅の風景と同じく、持ち帰らずに記憶
にとどめる。

「大連水餃子」はなかなかの繁盛である。
水餃子と紹興酒をたのむ。
紹興酒はガラスのコップに熱々で出てくる。
少しして水餃子がくる。

美味い

歯を立てると熱いスープがほとばしり出てくる。
なにより皮が美味い。食べているうちに顔がほころび、にこにこし
ながら食べている。

奥の席に酸素吸入を鼻につけた老紳士が、家族と食事している。
白髪面長で、上品な顔立ちである。

周りの客たちは気づかないのか、平気で煙草を吸っている。その
うち老紳士は鼻からチューブを外し、会話も弾んできたようだ。老
紳士は、煙草の煙も含めて、ここで食べることを楽しんでいるのだ
と思い、私も一服つけた。

水餃子は一皿10個。10個食べ終えて私は確信し、ラーメンと青
島ビールをたのんだ。

ラーメンは時間がかかるということ、あんかけであることを了承し
て、じっと待った。その間も、先ほどの嬉しさが心と体をほぐしてく
れるようであった。

ラーメンが来た。
一口すする。美味い。
食卓には胡椒はない。ラー油をひとたらしする。
とろみのついたアンには、豚肉、ニンジン等の野菜に加えて、キュ
ウリの千切りがのせてある。それがさわやかな風味を加えてい
る。

キュウリの香りや味が風味を添えるほどに、言葉の原義通りに微
妙な味付けである。

そして、なにより麺が美味い。
餃子にせよラーメンにせよ、小麦の香りと味が舌でふくらみ、のど
の奥から鼻へと抜けていく。

ラーメンや餃子が美味い店というのは、それは、具やスープが美
味い店ということで、餃子にいたっては、具の多様性や焼き方に
頼っている。

中国人が麺や餃子などを食べているところをテレビなどで見てい
ると、具は、麺や皮、つまり小麦粉を食べるための添え物のように
思える。

粒食文化の日本人は、実のところ「粉」の食べ方を知らないので
はないか。

そこまで言わなくとも、センスが違う。
日本の代表的な小麦粉食はうどんだが、小麦粉そのものの香ば
しい香りを楽しむのとは違うように思う。

日本人の穀物の食べ方は、米の食べ方に象徴されているのでは
ないか。

米は洗わずに「研ぎ」、煮ずに炊くのである。
「炊く」というの関西弁であるのかもしれないが、関東でもどこで
も、米は「炊く」のである。

そこには、米の粋の味を味わおうとする姿勢がある。与謝蕪村の
「新米もまだ草の実のにおいかな」という発句によって、私たちは
ようやく米は草の実であることを思う。

洗うこともせず炒め、水で煮るパエリアやリゾットとはちがう味覚
が、日本の味覚にはある。

日本唯一の小麦粉食と言ってもよいうどん(ほうとうや、すいとん
も?)の作り方の基本は、この米の調理方法にあるのではない
か。

ひょっとしたら、私たちは小麦粉を食べているのではなく、小麦粉
から抽出されたグルテンを食べているのではないか。

幼いころ祖母の家での餅つきの際に、たくさんのせいろで蒸し上
がった餅米から立ち上る香りを嗅いだが、そのざらついたような甘
い香りは、炊いた米からはしない。

もっと抽象化された香りとでも言うのだろうか。

これは学問的には抽象度が進んで高度化した、あるいは洗練さ
れたと言えるのかもしれないが、食物の持つ、すなわち生命ある
ものの荒々しい力からは遠ざかっているのかもしれない。

そうした感性で作られた餃子の皮やラーメンの麺とは次元の違う
ものであった。

支払いのときに尋ねると、大連から帰国された李さんの手打ちだ
という。

JRは毎時14分と38分の発であることを記憶していたのだが、その
まますぐに帰りたくて、唐津駅北口でタクシーに乗る。

ホテルの名を言うと、「ああ、ホテル○○○ですか」と気落ちした
口調。

なんだかゆっくりと走る。
メーターが一度音を立ててほんの少しでホテルに着く。
広島の感覚でタクシーに乗ったのだが、歩いても10分程度の距離
だったのかもしれない。今地図でたしかめるとほんの2キロメート
ルの距離だった・・・。

ホテルの部屋で、唐津を考えようとした。
が、いつもの習慣でテレビをつけた瞬間、唐津の何であったか、
私の中から抜け出てしまった。

自分の部屋で見ている番組が、そのまま画面に映し出されて、私
は自分の部屋でと同じように画面を眺める。

テレビによる文化の画一性の弊害が言われたのは何年前だろう
か。

その弊害とはこういうことなのかと、合点する。
さっきまで唐津の街の空気が身にしみるように残っていたのだ
が、テレビ画面を見たとたんに、自室にいるかのように消えた。

単に集中力と記憶力の問題なのかもしれないけど。

つもり積もった疲労のせいか、ぐったりとしてせっかく買った本も袋
から出すこともせず、風呂を使ってぼんやりとまたテレビを見た。

・・・・だめぢゃん


城から虹ノ松原を望む。

場内橋から城を振り返る。

場内橋から松浦川川上を見る。水都という眺め。

12月12日(日)曇

昨夜は眠りが浅く、何度も目覚めたような、それでも寝たような、よくわからない。

10時前出発。

曇り空なので、トップは開けずに行く。
このまま帰れば早くに着くので、どこかで映画でも観てみようかと思う。
福岡でと思い、昨日とはちがい「無料道路」国道202号を走る。

海岸沿いのなかなかの風光の道。串崎のカーブを曲がるところに、さびれ朽ちはてたリゾートホテルの
残骸がある。

前原で気が変わる。福岡のような大きな街で観るより、地方都市然としたところで観た方がよい。
カーナビに目的地を入力し直し、道をそれる。
曇り空ながら雨も降りそうもなく、オープンにする。

県道12号に入る。しだいに細い山道に。
こうでなきゃ。1回の旅に1回はこういう山道でなければ。
とはいうものの、離合困難なほどの道もなく国道323号に入る。

11時30分過ぎ、ジャスコ佐賀大和店「イオンショッピングタウン大和」に。
まずは腹ごしらえ、「オニオン」で盛り合わせランチ+コーラをたのむ。
ハンバーグと、エビフライ、チキンソテー。前菜にオニオンスープと野菜サラダがつく。
ま、ファミレスの味。ハンバーグは豆腐ハンバーグかと思うほどやわらかく、フォークにのせて食べる。

食べ終え、映画の時間をたしかめると、さほどみたい映画もなく、時間も中途半端。
店内の本屋へ行く。
けっこう大きく、陳列のしかたもわかりやすい。文庫本を中心に物色し、4冊購入。

12時30分過ぎ出発。
佐賀大和ICから長崎道にのり、そのまま高速道で帰る。
途中自衛隊の車両がいる。「16普****」とあり、調べてみると第16普通科連隊、大村駐屯の部隊であ
る。

軽装甲車を追い越す。本物の迷彩塗装には恐怖に近い迫力がある。別の軽装甲車の屋根には、機関
銃の盾がある。

兵員輸送車の横を追い越すと、透明ビニルの内側でトランプをしている隊員がいる。その車両だけでな
く、その後追い越した車両もそうであった。だからどうだということもない。

イラク駐留の問題がある中で、命令があれば行き命令がなければ行かないという姿勢の中で、移動の
兵員車の中でトランプをする。それもありかな、と思う。

透明ビニルからみえた刈り上げたもみあげが、若々しかった。

ほどなく関門橋を渡る。行きもだったが、開門海峡を見るたびに源平の盛衰を思う。敦盛のこと、安徳帝
のこと。

中国道、山陽道と帰路をたどる。
盛んな紅葉の時期もとっくに過ぎ、色寂びた木々の中を走る。
曇天の鈍い明るさの中、夢の光景を見ているようである。
防府あたりで、マイクロバスが追い越し、後ろの窓から女子高生たちが盛んに手を振る。
振り返すと、弾けたような身振りで、嬌声が聞こえてくるようだ。
無邪気とはこういうことなのか。

16時30分過ぎ帰着。
今回の旅は、じつはバンド練習が入ってきたのだが、2ヶ月前からねらっていたので、休ませてもらっ
た。

バンマス、ごめんなさい・・・


走行距離:722Km

BGM;Blue Grass From The Gold Country / The Vern Williams Band
    Traditional Dance Tunes / Hollow Rock String Band
    On The Street Corner / 山下達郎
    Rarities / 山下達郎

今日のリンク

唐津観光のご案内
大八車
大連水餃子
水餃子につい
ジャスコ佐賀大和店

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