8月16日(くもり)


ホテルのチェックアウトが11:00なので、ぎりぎりまで寝ていた。
10:50頃、チェックアウト。

堺の街を路面電車が走っているが、感じとしては高知市の路面電車と似ている気がする。

堺といえば、仁徳天皇陵と与謝野晶子であろう。
堺は、あらかじめ与謝野晶子をインプットして来たためもあるのだろうが、なるほど、与謝野晶子となんの違和感もない街であった。
こういうのを予断というのだが・・・・。

で、まず仁徳天皇陵へ。11:05頃には難なく到着。

中に入れるわけでもなく、ともかく、
見た!
ということで隣の「堺市博物館」へ。

じつは、晶子の生家跡に行きたいのだが、その住所はわかるのだが、カーナビの検索に出てこない。
晶子の生家は甲斐町にあるのだが、どうやら「かいのまち」と読むらしい。それがわからず、「かいまち」で検索していた。
公共施設に行けば、パンフレットとか手に入ると思ったのだった。
入場料200円と安いので、展示品を見てきた。
古墳からの出土品から、近世、現代までの展示品があって、なかなかおもしろかった。

中世の堺は、自由貿易都市として機能しており、その後も市民の教養の度合いを高いものにしている。
江戸時代のものであったが、屏風になった書に心ひかれるものがあった。
素直で、均整がとれていて、かつ柔らかな風格がある。全人格的な教養が感じられる。
千利休を初めとする町人文化の蓄積であろう。
今の堺は、大阪の衛星都市みたいなところがあるが、人々の中にはそうした気概が残っているのだろう。

博物館の入り口で、「ポケットさかい・堺・ビジターズ ガイドマップ」を手に入れる。
詳細な地図も付いていて、無料であった。

路面電車の線路が、中央分離帯とし
て使われている。

仁徳天皇陵

千利休像

地図のおかげで、12:20頃与謝野晶子生家跡へ。

電車通りにあったが、まわりには自転車が駐輪してあり、歩道の植え込みに小さい碑があるだけ。

海こひし潮の遠鳴りかぞへては少女となりし父母の家

中学の国語の教科書にも載っていた歌である。
晶子の生家は「駿河屋」といい、地図で見ると堺の旧街区のほぼ中心にある。
今は家具屋と保険会社が建っている。

その家具屋から海岸まで、地図で測ると直線距離にして1Km弱、かつての海岸線であったろう堀までは400m強。
はたして「潮の遠鳴り」はどのように、旧家の座敷で自らを閉ざすように胸を押さえていた晶子には、聞こえたのであろうか。

あるいは、聞こえぬ潮の音を聞いていたのかもしれない。
いずれにせよ、少女(おとめ)であった晶子の内面の象徴が潮の音であった。
それは、「初潮」とも通ずる直截な語彙である。
それを「数える」とは、自らの鼓動を内面に押さえ込もうとし、さらに押さえ込むのに難渋している姿が、あからさまに現れてくる。
そして「父母の家」と結ぶときに、父母に対する思慕の念とともに、自分を押さえ込んでいたものが、黒光りする柱や棟木のように黒々と、重々しく立ち現れてくる。
この歌を読むときの座り心地のなさは、懐かしさとともに自らを押さえ込んでいたものに対する怨み、そして、その怨みこそが自分の奥底を形成したという、アンビバレントを、感じさせるがゆえである。
懐かしさのように聞こえ、怨念のように聞こえるこの歌は、しかしながら可憐さを私たちに伝えてくれる。
薄暗い座敷で、障子窓から漏れ来る光を受けてほのかに照りかえる文机や、畳の目を見つめる視線が、この歌を成り立たせている。
そしてその視線の奥から、聞こえてくる幻のような潮の音。


次は、JR堺市駅付近のベルマージュ堺にある「堺市立文化館」へ行く。

ベルマージュ堺は商店と高層マンションがいっしょになった建物で、そこの食べ物屋で、少し遅い昼食。ロース豚カツ定食。小さい。味も普通。
駐車サービス券はもらえるかと聞くと、1000円の買い物でないと出せないという。
ははあ、と言うと、コーヒーでも飲んだらどうかというのでコーヒーをたのむ。
コーヒーと合わせても997円にしかならなかったが、3円分はよしにしてくれて、駐車サービス券をくれた。
古い漫画雑誌を見ながらコーヒーを飲んで、少しのんびりする。

ベルマージュ堺の弐番館に「堺市立文化館」はある。
そこの2階が入り口、3階が「与謝野晶子文芸館」で、4階が「アルフォンス・ミュシャ館」。
両方見られて、入館料500円。

「晶子文芸館」はこぢんまりとして、展示数も少ないが、自己満足に陥らず要所を押さえた展示で、晶子の作品や生涯がコンパクトによくわかる。

「ミュシャ館」は展示数も、日本にあるミュシャの作品としてはまとまった数としては多く、大変見応えがあった。
なかでも「La Nature」というブロンズ作品は、とても美しく、いつまでも見飽きなかった。

どちらも観覧者は私一人で、のんびりじっくりと見られて、心くつろぐものであった。

晶子生家歌碑

「堺市立文化館」入り口

14:00帰路につく。
住之江から15号堺線、1号環状線を経て中国道へ。
帰りは山陽道を通ろうとカーナビが言うので、仰せのとおりに。

広島東IC前で多少の渋滞があったものの、
18:40無事帰着。

カーナビは、渋滞情報などをいち早く流してくれ、道路の選択も確実で、指示のタイミングを飲みこめば便利な道具だ。
しかし、地図上の位置が全体的に把握することが難しく、今どのあたりを走っているのかわかりにくく、もどかしい思いもした。
まあ、道具は慣れなので、言うことをきいたり無視したり、自分なりに使えばよいだろう。
一番便利だったのが、地域ごとにラジオのプリセットを変えてくれることだった。
以前はいちいちサーチしていたのが、チャンネルを変えるだけで簡単にすんだ。
次に便利だったのが、到着先ホテルのサーチと電話だった。
携帯電話を接続したので、到着先をサーチして決定すると、すぐに電話して宿泊の可否を問い合わせることができた。
長距離のひとり旅だったので、カーナビのガイド音声に声を出して答えたりして、それはそれで不気味な光景だったかもしれないが。
以上、カーナビに関する感想。

今日の走行距離;365.2Km
今日のBGM:
Miles!Miles!Miles!/Miles Davis
Earth Works/Bill Brufford's Earth Works


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